ひめがたり~いばら姫に真紅の薔薇を~
「――で、機械オタク?」
「そ。機械オタク」
あたしはこくりと頷いた。
「機械全般、玲くんに判らぬことはないし、何か怪しげな機械組み立てることあるし。玲くんにかかれば出ない情報はないし」
――ふふふ、芹霞。櫂のお勉強タイムだよ?
以前…隠匿した赤点は、何食わぬ顔で立ち寄った櫂の家で、既に笑顔の玲くんにばれていて、後で櫂にみっちりしごかれた。
何処から漏れた、あたしの個人情報。
この従兄弟同士、あたしの赤点には容赦がない。
「だから玲くんなら、弥生の電話番号を調べるなんて簡単よ。これで玲くんが弥生の電話調べきれなかったら、あたし櫂に殺されていたかも」
「ああ、それはないわね。むしろ"生殺し"状態なのは、紫堂くんだろうし」
「???」
「芹霞、何回も言うけど…
あんなに極上男捕まえておいて、あんなに近くで、あんなに甘い目向けられてるのに…、
どっきんどっきんしないの?」
捕まえて…というか、幼馴染みだし。
甘い目…?
あたし舐めたことないんだけれど。
どっきん、どっきん…?
「どっきん、どっきんは……
するよ、一応。あたし女の子だし」
あたしの小さい声に、ぱっと弥生の顔が輝いた。
「いついついつッッ!!!
いつ目覚めたのッッ!!?」
凄い食いつき様だ。
「んーと、櫂が無言で睨み付けたり……ああ『目で殺す』みたいな時ね、あの凍るような威圧感には、さすがのあたしでも……」
「誰が恐怖を語れと言ったッッッ!!?
お前は"M"かッッ!!!」
「や、弥生ちゃん、怖い……。
どっきんどっきんする」
「私にときめくなッッ!!」
弥生は、はあっと大きな溜息をついた。
大分お疲れのようだ。