ひめがたり~いばら姫に真紅の薔薇を~
「身の程知らずもいい処ね。顕在能力はまだしも、紫堂櫂の未知数の潜在能力をそぎ落とす呪詛に、底の知れたお前如きが太刀打ちなど出来るものか」
厳しい藤姫の口調。
玲くんは怒るというよりも、薄く笑っていた。
「出来なくとも……
時間稼ぎくらいは出来るだろ?」
「玲くん、話さないで!!」
あたしは悲鳴のように声を上げた。
玲くんの激しく乱れた息遣い。
次第に呼吸の速さと荒さが増してくる。
あたしは頭が真っ白で。
発作は――
必ず起きてしまうだろう。
どうすればいい?
発作を止めるには、一体どうすればいい?
弥生の家で味わったあの無力感。
またあたしは…味わうの?
大好きな、優しい玲くんを助けることは出来ないの?
嫌だ。
そんなの嫌だ。
じゃあ、どうすればいいの?
助けてくれる人なんて誰も居ないこの場所で!!
「ぎゃはははははは」
ドアが開く音と同時に、
懐かしい耳慣れた笑い声が響き渡った。