ひめがたり~いばら姫に真紅の薔薇を~
ああ僕が。
母の言葉に縛られずに、
昔の櫂のように弱り切っていれば。
そして芹霞に出会っていれば。
僕は、櫂のように愛されたんだろうか。
僕が櫂のように…
全てを変えて芹霞だけを欲していれば、芹霞は僕の芹霞になっていたんだろうか。
錯綜する僕の想い。
そんな自分勝手な想いを抱えながらも、
泣き続ける芹霞が切なくてたまらなくて。
こんな顔をさせたい為に、
こんな気持ちにさせたい為に、
僕も櫂も…黙していたわけじゃない。
芹霞の笑顔が眩しかった。
何処までも…
僕達の闇に照らしつける、君の強さが眩しくて。
だから、君に恋焦がれて。
君は間違いなく生きている。
僕達以上に、生きる意味を知っている。
ああ…だから――
闇に還るなんて言わないでくれ。
どうしても辛いというのなら。
どうしてもこの世界が嫌だというのなら。
その時、僕も――…。
そんな時――始まったんだ。
由香ちゃんが見つけたプログラムの穴。
対象を指定するコードを見つけてくれたことを、あのパスワードの影で伝えてくれた。
ただ、それを軸に膨大なプログラムが組まれているから、そう簡単に瞬時変更は出来ないらしい。
対象を変えてしまえば、呪詛は櫂には向かない。
変えるとするなら――
――…僕の名前だ。
その刻印の代償が、始まった。