ひめがたり~いばら姫に真紅の薔薇を~
「……ハアッ、ハアッ…せ…り……か」
心臓を握りしめられているような痛みと苦しい呼吸の中、薄い意識で思うのは芹霞のことばかり。
芹霞。
そんな鼻息荒く、服をめくらないでくれ。
しかもそんな潤んだ目で真っ赤になって、そんなに可愛く。
「な……んか…ハアッ…やら…し…い……ね…」
また抱きしめて、キスしたくなるよ?
「エロいのはお前だ、白き稲妻ッ!!! 病人は病人らしく余計なこと考えるな!! 無駄な色気を垂れ流すなッ!!!」
ムカツク男……だ。
「いいか、こっちは……くッ!!! あの氷皇を……くそッ!!!」
苦しみと痛みが軽減されていけば、事態が見えてくる。
陽斗は、氷皇の攻撃を抑えている。
僕が治療可能な時間を作ってくれていたらしい。
「男に媚びを売るなんて、
本当に気に食わない女」
藤姫が芹霞に眼差しを向ける。
冷たい、それでいて蠱惑的な瞳。
「駄目だッ!!」
僕はまだ苦しみを覚える身体で芹霞に飛びつき、その両目を手で塞いだ。
「無駄だ。私には言霊がある。さあ小娘……」
僕は歯を食いしばって、荒い息の中で芹霞を抱きしめ、僕の身体で芹霞の耳を塞いだ。
「うふふふ。言霊を発せられるのは、声だけではない」
「う、あ……」
芹霞の眉根が寄せられた。
「玲くん……聞こえる……の」
芹霞の目の動きが普通じゃなかった。