ひめがたり~いばら姫に真紅の薔薇を~
「芹霞、弾くんだッ!!」
芹霞の顔は苦しそうで。
振り返る陽斗は、"遊ぶ"氷皇に手一杯で。
僕はまだ苦しみに定まらない意識を集中し、櫂に向かっている電磁波の一部を僕の右手に宿らせた。
僕の手が電気を纏う。
バリバリバリ。
藤姫に向けて障害波を発するも、
「外なる虚空の闇に棲まいしものよ、今ひとたび大地にあらわれることを、われは汝に願い奉る」
そう言葉を発した藤姫の身体は突如白い光に覆われ、僕の力を弾いた。
バリバリバリ。
「ざいうぇそ、うぇかると・けおそ、くえすねうぇ=ろえむ……」
何だ、この言葉の響き。
全身総毛立つ程の悍(おぞま)しさ。
バリバリバリ。
何度試みても僕の力が失われる。
僕の体調とは関係ない。
あの詠唱によって生まれた白い光。
あのせいで、僕の力が藤姫に取り込まれる。
僕の力が、藤姫の力となる。
何だよ、何をしでかしたんだ、藤姫は。