ひめがたり~いばら姫に真紅の薔薇を~

├お姫様の決断

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藤姫の口から漏れ出る――

呪文のような…不気味な凶言。


理解し難い意味不明な言葉は、藤姫の…悪しき邪な念を乗せて反響し、更に拡張しているように思えた。


ざわざわと…悪寒のようなものが全身に走り、鳥肌が立つ。


肉体が感じる感覚的恐怖より、もっと奥底にある…言うなれば、本能的な恐怖感が、まるで眠りから覚めるかのように…あたしの胎内で蠢(うごめ)くような気配を見せれば、その悍(おぞま)しさに、ただただ…声を上げたい気分になってくる。


もしあたしが――


その悍しさに耐えられていたら。

この先を不安に思わなかったら。



もしあたしが――


発作を起こした玲くんを、

縋るように見なかったら。



――僕は……ハアッ、ハアッ、君を……1人にしないからね?



あたしを見捨てることない優しい玲くんが、我が身を犠牲にするように…光を放つことはなかったのに。


予感がしたんだ。


この目映い光は、救済の光ではないと。

玲くんを…滅ぼしてしまうと。


玲くんもあたしと同じになるような。


そう――…

この世から消えてしまうような。



駄目だ。


玲くんのこの光は――


摂理に逆らう…

ERRORの光だ。



玲くんが覆い尽くそうとしているのは、藤姫や蒼生ではなく。


それを放つ玲くん自身だ。


玲くんから消えて行く。


表情が…生彩が。


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