ひめがたり~いばら姫に真紅の薔薇を~
蒼生が何かを言っている。
藤姫が何かを言っている。
現われた陽斗は――
蒼生によって瓦礫に埋もれたまま。
誰か――
玲くんの光を止めて。
このままだと玲くんは。
玲くんをどうか。
お願い誰か――!!!
白い光を遮ったのは――
太陽のような橙色と、
闇のような漆黒色。
玲くんを助ける力を持つ、相反し合う色合い。
黒と橙は、また隣り合い…
そこに白が混ざれば…
怖いものはない。
ああ…これで玲くんは大丈夫だ。
この2人が来てくれたのなら、玲くんは助かる!!
緊張が解けたあたしは、肩で大きく息をした。
感じる視線。
櫂だ――。
気を弛ませたあたしを…
固い顔で見つめていたんだ。
いつもなら…
――芹霞、大丈夫か!!!?
走ってきて抱きしめてくれるのに。
櫂は何も言わない。
動こうともしない。
憂いの含んだ切れ長の目は、
ただあたしを見ているだけ。
怒っているような。
戸惑っているような。
それは少なくとも――
何年も一緒に過ごしてきた"幼馴染"に対する態度ではなく。
距離が…あった。
ああ…――
やっぱり櫂に拒まれているんだ。
そう思った。