ひめがたり~いばら姫に真紅の薔薇を~
あたしが死んでいるから?
屍の傍にはいたくないのから?
そうだよね、普通はそうだよね。
あたしだって…気持ち悪いよ。
あたし達…
永遠だったのにね。
過去形の悲しみが胸をつく。
櫂の心が見えない。
櫂の心を知るのが怖い。
そう思っていた時、
「ぼうっとすんなよ、芹霞ちゃんッ!!!」
金色の瞳が真上に見えた。
「え!!!?」
途端、あたしは陽斗に床に押し倒され――否、陽斗が身体全体で蒼生の余波からあたしを護ったのだと、理解出来た時には…大きく床が抜け、支えを失くしたあたし達は落下した。
ロイヤルホテルでの落下の恐怖が蘇る。
「しがみつけッ!!」
陽斗の声に誘われるよう…
あたしは必死に陽斗の首に両手を回して抱きついた。
また、屈辱のお姫様だっこだけれど。
しかしそのおかげで、あたしは怪我1つしないで終着地点に到着でき、外界の…皹だらけのアスファルト地面に降り立つことが出来たんだ。
蒼生と玲くん、煌と櫂は、大小様々な瓦礫の向こうにいるのが遠目で見て取れた。
彼らとは遠い場所に降り立ったようだ。
姿を確認するのがやっとで、皆の会話など聞こえない。
うわ、建物の半分が崩れたのか。
建物の取り壊し工事のように、縦半分が見事に荒く崩れている。
驚きはそれだけではなく。
空が――赤い。
東京破壊だの、ゾンビだの。
空くらい赤くても別にいいのかもしれないけど――無性にこの空の色に親しみを覚えるのはなぜなんだろう。
異常なのに安心するというのか。
異常さに護られている――ような。