ひめがたり~いばら姫に真紅の薔薇を~
「身体平気か?」
陽斗が首を傾けて、心配そうな眼差しを向けてきた。
「あたしは大丈夫。それより陽斗は? 蒼生にやられた処、大丈夫?」
あたしは背伸びして、陽斗の頬に出来た傷をすっと指の腹でなぞる。
すると陽斗は僅かに金の瞳を細めると、不機嫌そうに顔を歪ませて顔を横に背けてしまった。
「放っておきゃ治るんだよ、俺は。
しかし――
白き稲妻……
このままだとやべえな」
ガツンッッ
何かがぶつかるような衝撃音がした。
音に振り向けば、光ったままの玲くんが蒼生とが対戦しているようで。
はっきりとした光景は目に届かない。
「あの異常な発光は、
限界超え――だ。
あいつの身体…感覚は麻痺して、苦痛を感じてねえな。
このままだと――
生きたまま屍だ」
面倒臭そうに、陽斗はがしがしと金色の頭を掻いて、ため息をついた。
「それはそうと、芹霞ちゃんよー」
俯いていた金の瞳があたしに向けられ、すっと細められた。
「お前……」
何を言われるのかと、固唾を呑んで陽斗を見つめたあたしは、
「絶縁でもしたのか、紫堂櫂と」
「直球かいッ!!!」
予想外の急襲に、思わず突っ込んでしまった。
「絶縁……まではいってないと思うけど……」
あくまであたしの一方的な希望なのだけれど。
「やっぱ……
死んでるっていうのは痛い要素だよね…」
ため息混じりに本音を漏らしたというのに、
「ぎゃははははは」
失礼な金の男は大笑いした。