ひめがたり~いばら姫に真紅の薔薇を~


「何故あたしの嘆きを、笑いに変えるッ!!」


憤慨したあたしは、足でダンダンと音をたてて、地面を踏んだ。


「いや……やっぱ潔いよ、お前。割り切り方が厭に雄々しいというか。普通もっとダメージに動けねえだろ。やっぱりお前は、普通の女じゃねえ」


陽斗は…後で現われたから、

あたしの8年前を知らないはず。


だけど特に驚く様子もなく、判っているということは――。


「陽斗も……知ってたんだ?」


「薄々…な。闇を司ると言われた血染め石が、力を持たないお前の中から感じられ、尚もそれが紫堂櫂の放つ気と同じものだと気づいたら。普通変だと思うだろ? 

まあ、紫堂櫂はお前の中の力の気配、外部から必死に隠していたようだがな」


少しだけ言いにくそうに陽斗は言った。


「で、陽斗はどう思う?」


やっぱり――気味悪いよね。


「別に?」


あたしの心配をよそに、陽斗は逆に不思議そうにあたしを見た。


まあ、知っていてあたしの傍に居てくれたんだから、あたしが死んでいるという事実に対しては拒否反応を示してはないんだろうけれど。


「それだけ?」


何というか、あっけなく。


「それだけ。俺が普通じゃない…再生する身体って聞いて、お前気持ち悪く思ったか?」


「別に?」


あたしの即答に、陽斗はぎゃははははと笑った。


「つまり、そんな程度のことだ、俺達にとってはな。俺にはお前の"衝撃の過去"なんてどうでもいいし、生きていようが死んでいようが、俺はお前が目の前に居ればいい。まあある意味、闇属性同士でよかったというか」


「……はあ。陽斗が櫂だったらいいのに」


本当に小さくぼやいたつもりだったんだけれど、陽斗には聞こえていたらしく思い切り不機嫌そうに顔を歪ませていく。


< 904 / 974 >

この作品をシェア

pagetop