ひめがたり~いばら姫に真紅の薔薇を~



「俺は俺だろッ、芹霞ちゃんッ!!!」

「は、はいッ!! 全くその通りでございますッ!!」


あたしの双肩を両手で強く掴まれて、真正面から怒ったように真剣に怒鳴られれば、怯んだあたしは陽斗に従うしかなく。


「よりによってあいつと比較されるなんて……報われねえよな、俺……」


そんなぼやきが風に流れた時、



「煌、玲を回復させろッ!!」



櫂の叫び声が、厭にはっきり聞こえてはっとした。


途端何かが、赤い空に突き上げた。


櫂と蒼生が拳を交えているのが、何とか判るけれど。


…って、櫂が戦ってるの!!!?


煌は!? 玲くんは!?


ここからではよく見えない。



「おいおい、何処行く芹霞ちゃん」



慌てたような陽斗が、駆け出そうとしたあたしの腕を掴んだ。



「櫂を助けるに決まってるでしょッ!!」



「決まってるって……どうするつもりよ、お前」


そうだ。

あたしは無力だ。


どうしよう。

行った所であたしは足手纏いになる。



「俺に言わねえの?」



唇を噛み締め暫く俯いていたあたしに、揶揄するような声が届く。


「言えば? 紫堂櫂を護ってってさ」


「……言えるわけないよ」


蒼生の相手をしろなんて、死ねと言っているもんだ。



「どうして俺に頼らねえの?」



遠くで連続的な衝撃音が聞こえる。


「頼るとかそんな次元じゃない。

大体陽斗は櫂を憎んで……」


「お前が俺に頼るのなら、そこは目を瞑るさ」


「い、いやでもその……」


「随分と歯切れ悪いな、お前らしくもない。お前、紫堂櫂が死んでもいいの?」


「嫌。それだけは絶対嫌」



「ぎゃはははは。即答か。


だったら……

護ってやるよ、お前の為ならさ」


陽斗は、笑いながら言った。


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