ひめがたり~いばら姫に真紅の薔薇を~
「陽斗、取り消すッ!!
前言撤回するッ!!
帰ってきてッ!!」
だけどあたしの言葉はもう遅く。
「はる…「陽斗~~ッッッ!!!」
この絶叫は――
あたしじゃない。
この声は――煌だ。
何だか怒ってギャンギャン吼えている。
何だ?
どうした?
というか、何処から声が聞こえてるんだ?
きょろきょろ…。
周囲を見渡せど、該当主達はあたしの視界には入ってこない。
はて?
「ぎゃははははは!! BR002!! 俺に怒り狂う暇あるなら、白き稲妻と芹霞を早く紅皇の元へ連れて行けッ!!!」
「うっせえよ、陽斗ッ!!
お前判っててやりやがったなッ!!!」
「俺に見せつけやがった小さなお礼だッ!! 士気があがっていいだろうよ、ぎゃははははは」
「黙りやがれッ!! くっそ~ッ!! 玲と芹霞を紅皇に預けたら、俺だって……」
「……聞き捨てならねえな、BR002。預けたら何だって?」
「俺から鉤爪を引けッ!! 俺の敵もお前の敵も氷皇、あっちだッ!!!
玲~ッ!! 陽斗を殺ろうとすんな、ぐだぐだ言わずお前は俺の結界の中でおとなしく寝てやがれッ!!! お前ふらふらになってんだから、必要以上に戦闘態勢になって体力消耗するなッ!!
陽斗も無駄に玲の喧嘩買わねえで、さっさと櫂の処へ行けッ!!!」
…………。
何処で……
何を……
あんなに怒鳴り合っているんだろう。
見えないからどうなっているのかは判らないけど、何だかまとめている煌が大変そうだ。
やっぱり…緋狭姉に振り回されている奴は、苦労症の気が抜けないんだろうか。
ハードボイルド…遠いね?
ご愁傷様…。