ひめがたり~いばら姫に真紅の薔薇を~
「行こう」
あたしが利用されないこと。
紅皇の庇護を、玲くんと共に受けること。
――悔しいけれど。
そう思い、重い足を動かして駆けだした時、
『うふふふふ。逃がすと思って?』
薄気味悪い声が頭に響いてきた。
「どうした、芹霞!?」
『私が、血染め石を諦めると思って?』
「芹霞!!?」
『それでも行きたいのなら、そこで見ていればいい。呪詛が、紫堂櫂を襲う様を』
どくん。
あたしはの中の何かが、反応した。
どくん。
苦しい。
何……これ?
「この気……まずッ!!
地下の魔方陣が動き出したか!!?」
あたしは2つ折りになって、地面にしゃがんだ。
「芹霞!!?」
ざわめく気配。
「――ッ!!! 血色の薔薇の痣(ブラッディ・ローズ)が、とうとう雪崩れ込みやがったか。桜の奴大丈夫かよ……」
煌が臨戦態勢に入ったのが、その緊張感で感じ取れた。
「櫂と陽斗で乗り切れるのか? 大体、藤姫が何かをしでかそうとしているのにッ! だけど玲を…放置する訳にもいかねえし」
玲くんから何も返らない。
どくん。
判る――。
あたしの中の血染め石が、
主の危機を知らせている。