ひめがたり~いばら姫に真紅の薔薇を~
視えるんだ。
此処からは見えないあの場所の光景。
もしかすると――
藤姫が見せているのかも知れない。
白く光る地面。
光は広範囲に拡がり、血色の薔薇の痣(ブラッディ・ローズ)を捉えて吸収していく。
「うわ、血色の薔薇の痣(ブラッディ・ローズ)を贄にして力を大きくさせているのかよッ!!」
煌は目がいいから、この距離で見えているのか。
突然胸を押さえて蹲った櫂。
笑う蒼生。
声を荒げて櫂に近寄る陽斗。
そして建物の上方には――
見下すように艶笑する紫色の着物姿。
『うふふふ。
呪詛の対象が…変更された』
由香ちゃんがいる。
泣きながら機械の前に居る。
変更って……誰から誰に?
ああ――空が。
あたし達を護るように覆っていた赤い空さえもが――薄れていく。
「やべえ、時間かかりすぎていたか。……ん? おい、玲!? こいつ……息してね……いや、幽かにあるか。驚かせるなよ、焦ったじゃねえか。でもいつ止まるか判らねえ。あの女のやらかしたせいか!!? このままなら、玲も櫂もモロ呪詛に……くそッ!! 何で俺は此処で回復出来ねえんだよッ!!!」
煌はどうすべきか考えあぐねているようだった。
脳裏に、鮮明に映る櫂は――
「煌、櫂もやばいッ!!!」
櫂は地面に倒れ込んでいて。
苦しそうに声を上げていたんだ。
「煌、玲くんを紅皇サンの元に連れていって。
あたしは――」
………!!!!