ひめがたり~いばら姫に真紅の薔薇を~
唯一残る芹霞の痕跡を…
胸に抱えて蹲る陽斗。
大事そうに…離そうとはしねえ。
気に食わねえ奴だけど…
その心は痛い程どよく判る。
俺は陽斗の元に行き、怒鳴った。
「おい、ここで崩れてる暇あったら俺達に力を貸せッ!!!」
だが陽斗は反応しない。
俺はイラッときた。
時間、ねえんだ。
俺が陽斗の鉤爪に手を伸ばすと、陽斗は冷たい目を向けてきた。
よし、戦意はある。
俺は一発、拳を陽斗の鳩尾に入れ、引き摺った。
成り行きを見つめていた玲と桜に俺は言う。
「戦力は多い方がいい。このまま居ても、氷皇の気紛れがなくなれば櫂の暴走に殺される」
そして玲は陽斗に言った。
「陽斗。芹霞は助かる。いいね? その為に僕達は藤姫の処に行くんだ」
おい、陽斗。
どうして玲の言葉なら、ちゃんと聞くんだよ。
「煌が馬鹿だからですわ」
桜がぼそっと呟いた。