ひめがたり~いばら姫に真紅の薔薇を~
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建物は櫂に崩されている以上、

藤姫が逃げ込む先としては"あそこ"しか思いつかねえ。


地下室、だ。


あの地下なら――

とりあえずは風害に耐えられるだろう。


櫂の力をも無効化したあの空間なら。



しかし…

俺達に取る術あんのか?


あそこは、あの女の独壇場じゃねえかよ。



まあいい。


頭使うことには慣れてる奴が、一緒に居る。


馬鹿な俺が考えるより、そいつらが考えてくれるだろ。


俺は皆を先導し、階下へ続く階段の名残を残す道程を跳ね下っていく。


あの"開けゴマ"の入り口は、不用心にも開いている。


馬鹿な藤姫。


閉めておけばよかったものの。


そこまで慌ててたのかもしれねえ。



「……ん?」


玲が急に立ち止まり、俺の腕を掴んだ。


「どうした?」


「藤姫の邪気は確かにあるけど、他に居る」


確かに。

流れる邪気が大きすぎて見逃す所だった。


「本当ですわ。この気……」




「「「亜利栖の弟――



御階堂充、だな」」」




皆が一同口を揃えた。


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