ひめがたり~いばら姫に真紅の薔薇を~
今まですっかり忘れていた、御階堂。
俺さえもその存在忘れるくらいだ、お前余程"残念な子"だな。
今頃出張って何をやらかすつもりだ?
声が聞こえる。
俺達は気配を消し、少し傍聴することにした。
「神崎を危険に巻き込むなと言っただろ!?
殺すなんて話が違うッ!」
御階堂は藤姫に怒っているらしい。
当然だ。
あいつだって芹霞に惚れていたんだから。
「神崎を僕にくれるというから協力したんだ、それをッ!」
「協力……?
対等の立場で私に物を言うな」
藤姫は態度を豹変させたみてえだ。
「お前は道具にしか過ぎぬ」
高笑いが聞こえてくる。
「お前、気づいてなかったろう。お前が捧げたこの身体は、お前の血の繋がった実の姉だ」
「え!?」
その驚きように、俺は陽斗にこっそりと聞いてみた。
「知らなかったのか、あいつ?」
俺でさえ知っているのに。
「………。
知っていると思っていた。俺も」
どうやら知らなかったのは御階堂だけで。
「僕は……姉さんを
お前の毒牙にかけたというのかッ!!!」
気づくのおせえよ。
会長の職についてたって、
櫂を真似したって。
お前、やっぱ…"残念な子"だ。