ひめがたり~いばら姫に真紅の薔薇を~
「――間に合う…?」
「ああ。だから一刻も早く、何とかしろッ!!! 私の力が尽きる前に」
芹霞が助かるのなら。
一縷の望みが残されているのなら。
「アカ~。俺のこと忘れてない~?」
氷皇……。
「アオ、芝居は終わりだ。
終了宣言しただろう。
お前が見てるカメラに…
"タイムオーバー"だと」
「ええ~。終わり~?」
「わざとらしい芝居はやめろ。そういう"約束"だったはずだ。ほら、さっさと芹霞に力を注げ」
「昔から人使い荒いな~、アカは。
情報提供してあげてたの、俺なんだよ?」
「つべこべ抜かすなッ!!」
「……緋狭さん?」
氷皇と何の話をしているんだ?
「ああ、坊。大丈夫だ、
アオは胡散臭すぎる存在だが、敵ではない。
今は一応」
「……は?」
「やだなあ~、気高き獅子。
俺、君らに対して手加減して、いつも生かしてあげてたじゃない」
俺は目を細めた。
「アオが本気を出せば、まだまだ未熟なお前達など、よくて…"再起不能"だ」
………。
つまりは――
「あはははは~。
敵の敵は味方、みたいな?
ね~、アカ~?」
「じゃれるな、アオ。早くしろ。
ほら、坊も何もたもたしてる」
「は、はい…」
俺にとって――
緋狭さんは。
紅皇は。
理解の範疇を超えた、本当に凄い人だ。
闇しかなかった暗黒の事態は、
希望という光に…反転する。