ひめがたり~いばら姫に真紅の薔薇を~
~エピローグ~
~エピローグ~
◇◇◇
……ねえ櫂、覚えてる?
幼い頃、2人で読んだ
『いばら姫』――。
櫂はいつまでも、可愛いお姫様、
あたしはいつまでも、お姫様を助ける王子様で。
あたしと会えないまま、
100年も眠りにつくのは嫌だって泣いたよね?
――芹霞ちゃあああん。
愛くるしい大きな瞳から、滝のように涙を流して…
小さな身体を大きな悲しみに打ち震わせて。
――僕を1人にしないでえっ!
そう…
あたしに抱きついて泣いたよね?
あたしの可愛い櫂。
泣いてばかりの甘えんぼの櫂。
あたしは櫂が大好きだよ。
どんなに櫂が、完璧主義を遂行出来る美貌と頭脳を持ち合わせたとしても。
どんなに櫂が、財閥の御曹司としてあたしの手の届かない高みに昇っても。
櫂という存在自体が、
あたしの生きる原動力になるの。
櫂を守る為に…
あたしは強くなるから。