青空、ハレの日☆奇跡の条件(加筆修正中)
「それですけど・・・・・・。花火ってのはどうかな?」

 また恐る恐るといった感じの仙太の案に、一同はポカンとした顔となる。
誰もが真ん丸とした目で、仙太に注目していた。

(あれ・・・? 駄目?)

 今、この瞬間、この場に氷河期が訪れたのではないかと勘違いするほど、仙太は冷たい空気を全身に感じた。

 こんな時、仙太が一番恐れているのは空兎の反応だ。そっと目だけ彼女に向けてみると、口を半開きにして、誰よりも丸い目をした見慣れた従妹の姿が視界に入った。

(あ、これはやばい・・・・・・)

 そう直感した矢先、視界の空兎の眉が、鋭い角度に釣り上がった。

「せっちんっっ!!」

 鼓膜を貫かんばかりの大声と共に空兎が仙太に飛び付く。その勢いに押されて仙太は地面に後頭部を打ち付けられ、空兎が馬乗りの形になってしまった。

「お、落ち着け空兎! アイディアがまずかったのなら謝るけど、ここまでやることは・・・・・・」

 早口で、思い浮かぶ限りの言い訳を捲し立てる仙太に、空兎はそれを遮って叫ぶ。

「いいよ! それ、あり!!」

「・・・・・・はぁ?」

 予想していたこととは180度違った反応に、仙太は呆気を通り越して、魂が抜けそうな気分になった。

 そんな仙太の心中に全然気付いていない空兎は、仙太から離れて他の皆に「花火だよ! 花火!決まりだね!」と言ってはしゃいでいる。

どうやら他の者も仙太の案には好感色のようだ。

(良いんなら紛らわしいリアクションしないでくれよ・・・・・・)

 必要以上にバクバクする心臓を押さえながら仙太は踞った。
 そんな彼に一杯の紅茶が差し出される。

「これで心を落ち着かせてください」

 爽やか顔のヒーローは、仙太の心中を察したようだった。苦笑いをしながら、仙太はジョーから紙コップを受け取り、それを一口に含むと、

「ナイス!せっちん!その案に決定よ!」

 狙いをすましたかのように、空兎が思いっきり仙太の背に張り手を見舞った。当然、紅茶は水鉄砲の如く吹き出し、仙太はむせ返った。

「・・・・・・大丈夫ですか?」

「・・・・・・この数分で寿命がかなり減った気分です」

 心配するジョーに、仙太は弱々しく答えた。
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