青空、ハレの日☆奇跡の条件(加筆修正中)
「なぁ、突然だけど、“ハレとケ”って知ってる?」

「ハレと」

「ケ?」

 仙太と空兎は、聞いたこともないその言葉に疑問符を浮かべた。


§


「ありがとうございました!」

 先程の若いカップルを見送りながらジョーは頭を下げる。セレビアが置いていった伝票は、やはりというかジョーが代わり払っておいた。

(怒らせてしまいましたかね……)

 そう考えるといつもの爽やか笑顔もどこか影が落ちる。それでも注文等で呼ばれた場合は、いつもの笑顔で行かなければならないのだが。

(考えてもしょうがありませんね。いくらセレビアさんとはいえ、理由もなく“奇跡”をお譲りするわけには……)

 ふと、ジョーは自問する。果たして自分はそれに答えることができるのか、と。

(……何故でしょうね。受け入れたはずなのに)

 とりあえず零れる涙は、先程の若いカップルのテーブルを拭く作業で誤魔化した。

(まだ……未練があるということですか……)


§


「君らはヒーローを信じるか!?」

 四年前のある日、そう言った少女がいた。

 少女の名は、緋上ハルナ。

 くりっとした大きめの目に栗色の肩まで伸びた髪が外側に向けて跳ねているその15歳の少女は、その場所に似つかわしくないほどの元気な声でもう一度叫んだ。

「もう一度言う! 君らはヒーローを信じるか!?」

「・・・・・・・・・」

 返ってきたのは沈黙。
 とある病院の面会室にいた老若男女が一瞬にして沈黙に包まれた。彼らからしてみれば患者が一人寝言を叫んできたといったところだ。

 患者、そう。
実はハルナは、その元気っぷりが虚栄ではないかと思えるくらいの重病者なのだ。
 現代医療では原因不明にして、治療不可。いわゆる不治の病である。

「何、皆キョトンとした顔してんのよ! あ、『この人頭おかしんじゃね?』とか思ってるんでしょ? んふふ! 残念ながら頭は健康的よ!」


< 145 / 500 >

この作品をシェア

pagetop