青空、ハレの日☆奇跡の条件(加筆修正中)
「嘘じゃありませんよ。今から証拠を見せますね」

 そう言うなり、ジョーは変身の際の掛け声を唱えようとするが───

「……ダメだよ、お兄ちゃん」

 ギュッとジョーを止めるかのようにハルナの手が動く。

「実は目、あんまり良く見えないんだ……」

「え?」

「あはは……だから、お兄ちゃんがホントにヒーローでもさ……見えなきゃ意味ないよ……」

 ハルナは何故いきなりこのようなことを言い出したのだろうか。
 本当に病気のせいで視力が落ちてしまったのだろうか?

 それとも───

「………そうですか」

 目を閉じるジョーは全てを悟ったのかは不明だが、変わらない優しい微笑みを浮かべていた。

「では、視力が回復した頃にお見せすることにしましょうか」

 コクンと、ハルナが頷く。その時見せた彼女の笑顔だけでジョーは満足だった。



 ───違う


 病院のトイレの洗面台で頭から冷水を被ってジョーは否定する。

 何がヒーローだ!

 妹の一生に一度の願いも叶えてあげることもできないのがヒーローなのか!?

 違う! 違うだろ!!


 沸き上がる熱を全力で冷ますかのように冷水をぶっかける。
 そして、ようやく冷め始めた頭を上げると、鏡にいつもの自分はいなかった。

 これが本当の自分の姿かと思うと、自嘲できた。




 そして、この13日後。

 ハルナは還らぬ人となると同時に、そのショックからか、ジョーは変身する能力を失った。


 ───ハルナは何故ヒーローに会いたいのですか?


 あの日、院内夏祭りの約束を取り付けた後、待望のプリンタイムを復活させたハルナに、ジョーは再びこの質問をしてみた。

 今度はハルナも検査中に答えを出してきたのか、自信たっぷりに答えた。


 ───理由なんてないのっ! ただ会いたい!それだけなのよ!


 呆れるくらい、けど、どこかハルナらしい答え………。

 それから四年後、ジョーはあの時、見た笑顔を瞼に焼き付けながらも平凡な日々を送っていた。

 失ってしまった命は戻らない。
 幾度となくあれは天命だと受け入れようとしても、やはりヒーローでも難しいものだ。
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