青空、ハレの日☆奇跡の条件(加筆修正中)
「嘘だ・・・・・・」

 仙太は心の中だけに止めておくつもりだったその一言を、思わず口に出てしまった。同時にこの本の筆者の神経を疑った。


 “この世に奇跡は一度も起きたことがない”


 では、よくテレビや新聞などで“奇跡の生還”とか言われているあれは何だというのだろう?

 あれは奇跡ではないと?

 いやいやいや、あのような出来事を奇跡と言うのではないか。それなのに、この筆者はそれを全否定している感じだ。

 決定、これは確実にインチキ本だ。

 仙太がそう決断し、すでに本から目を離していると、空兎が困り声を上げた。

「あ、あれぇ? 次のページが開かないよぉ?」

 その声に仙太の目は本へと戻る。

 確かに、いくら空兎が次のページを捲ろうとしても、まるで張りついているかのように、一向に開かない。空兎の要領が悪いのか、本当に何かで張りついた状態になっているのかは不明だが、とりあえず、仙太も試してみる。

「………え?」

 思わずその現実を疑った。
 仙太がやっても、次のページどころか、今、開いているページ以降のページは全て開くことができない。

 多少破れるのを覚悟で強引に開こうとするが駄目だった。開かないページ以降全てが接着剤か何かでくっつけられているようだ。

「誰かのイタズラかもな・・・・・・」

 冷めた口調で開くのを諦めた仙太がそう判断するも、空兎は違った。

「いや、これはきっと魔法の本で、こっから先のことは何かしなきゃ開かないんだよ!」

(まずい、目がマジだ)

 図書室で予感したことが現実になりそうで、仙太は焦った。
 そして空兎は高らかに爆弾発言をした。

「決めた! 今度の日曜、アタシ、“奇跡”を起こせる宝を探す!!」

 勢いよく立ち上がった空兎のせいか、卓袱台の隅に置いていたトマトがコロコロと落ちていった。
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