青空、ハレの日☆奇跡の条件(加筆修正中)
「マジすか?」

 本当に何者だろう、とまずます疑問が大きくなった。

「先程のコッペパンでお腹いっぱいになりましたから」

「マジすか?」

 本当に何者だろう、とまずます疑問が大きくなった。
 それでも一応、危惧はしたもののその日の夜の夕食時、クヲンが彼女の目の前で弁当を食べても彼女はニコニコとしているだけで一口も欲しがろうとしなかった。

(拒食体質か?)

 そうは見えない体型だがな、と思いつつ夜は更けていき、時計の針が9時を差す前頃になると、マリィはまるで昼間のような死体と見間違えそうな安らかな寝息をたて始めた。

(良い子は九時にはっ、てか……)

 内心で軽口を叩いて、なけなしの毛布をかけてやると、マリィの口から「コッペパン……」という寝言が聞こえてきた。

「なんつーか……イタイ娘だな」

 変な少女を助けたものだと、クヲンは苦笑した。
 でも、どこか放っておけなったのは事実だ。

(まぁ、明日になればなんとかなるだろう)

 学校の近くには警察署もある。そこで保護してもらえば解決だ。
 マリィも眠って、ようやく寛ぎのひとときを手に入れたクヲンだが、

「うわ、寒っ」

 突然来た冬の寒波に体を震わせた。残りの問題は、この夜をどう乗り越えるかだが、とりあえず熱いシャワーを浴びてから考えようと思い、バスルームへと向かった。

 そして、ひとしきり浴びたところでクヲンが出した答えは、ありったけの衣服を体に巻きつけて寒さを凌ぐという荒業だった。

 テーブルを境界線代わりにして衣服でグルグル巻きになったクヲンが横になる。さすがに毛布もどではないが、一晩くらいならば耐えられそうな暖かさだ。

 そして、クヲンは一度だけマリィの寝顔をテーブル越しに瞳に焼き付けながら、電気を消した。


§


 ジリリリ………。

 目覚まし時計のけたたましい音でクヲンの重々しい瞼は開かれる。
 それを止めるために手を伸ばすものの体が固い。

(やべぇ……。慣れない寝方するもんじゃないわ)

 己の体が衣服によってほとんど身動きがとれない状態だということを思い出して、クヲンは「ふんが~!」と絶叫を上げながらようやく目覚まし時計の近所迷惑な音を止めた。

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