青空、ハレの日☆奇跡の条件(加筆修正中)
 あまりの正直さに、クヲンは返す言葉を失いつつも不思議と気分は清々しいものだった。
 同時に目の前のこの少女のことをもっと知りたい。
 放っておけないという世話焼きと好奇心がクヲンの心の中で湧いた。

「まぁ、それはいいや・・・・・・とにかく警察に行って話を───」

 そう言って手を差し伸べたクヲンの言葉を遮ってマリィは、

「色々とごちそうさまでした」

その狭い空間内で無理矢理向き直って深々とお辞儀をし、今度はクヲンに対して横に向いて何かコツを見つけたかのように素早い動きで壁の隙間を抜けていった。

「……やっぱ変な奴」

 マリィの姿はすっかりクヲンから消えていた。
 だが、この日の放課後、クヲンは再びマリィと出会う。
 またも、あの裏通りでマリィが行き倒れている状態で……。

「だから、なんでだよっ!」

 叫びつつも、先程コンビニでコッペパンを買っておいたのは、ある程度クヲン自身想定していたからかもしれない。

 いや、ひょっとすると何処かで期待していたからからかも。

(………まさかね)

 心の中で言い訳しつつ、昨日と同じコッペパン一個を時間かけて食べるマリィを苦笑しながらクヲンは見つめた。

 その後は昨日の繰り返し。
 一緒にクヲンのアパートに帰り、クヲンの夕食風景をマリィがニコニコ顔で見守り、9時前にマリィはコテンと眠り、クヲンはそんなマリィに毛布を掛けて、自分は衣服を巻いた。

 そして───。

「・・・・・・マジですかぁ」

 コンビニで買ったばかりの六枚切りの食パンはおそらくマリィの腹の中で、肝心のマリィは、昨日と同じく奇っ怪なメモと四つ折りに畳まれた毛布と共にトンズラしていた。

「……さて、本日も卵とベーコンにアスパラか~」

 溜息をつきながらそれらを探るが、生憎と卵しか見当たらず仕方ないのでそれをゆで卵にして食べた。

「朝食の最短時間記録更新だな……」

 毒づきながらも、クヲンの顔は笑っていた。

 そしてまた昨日と同じルートの通学路で行くのも、もしかしたら同じ道でマリィと会えると何となく期待していたからだ。

 そして、あの建物と建物の間へと辿り着く。駆け寄って覗いて見ると……。

(まぁ、いねぇ……よな)


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