青空、ハレの日☆奇跡の条件(加筆修正中)
 窓ガラスは粉々に飛び散り、巻き上がる煙と炎が視界を覆ったが、セレビアは気にせずに、この間にハットの封印を解きに向いに走る。

 煙が晴れてきた頃には、クヲンが立っていた壁には大穴があいており、その縁には炎がなぞるようにして未だに燃えていた。

 そして、そのクヲンはというと。

「信じらんね……」

 白き翼を生やした天使の姿で外であるグラウンド側へと滞空していた。
 爆発のダメージはどうやら天使の翼で軽減したようだが、衝撃で飛び出てしまったようだ。
 顔は少し呆然としたといったところか、あまりのセレビアの非常識ぶりに開いた口が塞がらないようである。

 そんな折、そのセレビアが穴の開いた壁からその姿を見せた。
 左手には箒。同じ脇にはあの“本”が挟み込まれている。そして、頭にはふちが大きく三角に尖った黒いハットという、見事な魔法使いスタイルを完成させていた。

「あら~絶好調って奴ですか?」

「そういうこと、残念♪」

 「ドキュン!」と再び拳銃の形を作った指をクヲンに向ける。
 直後、夜天の空より落ちてきた雷が小生意気な天使を狙う。

「わっと!」

 間一髪、それをかわすクヲン。
 だが、セレビアはその隙を狙って壁の穴から箒に跨り、外へと脱出。
 瞬く間に学校のグラウンドを抜けていった。

 それを見たクヲンは「鬼ごっこじゃ負ける気がしねぇよ!」と軽口を叩いてすぐさま後を追った。

 セレビアが操る箒のスピードもかなりのものだが、クヲンはそれ以上に速い。
グングンと二人の差は縮まり、追い付くまでに数十秒と掛からなかった。

「この程度かい?」

「っ!」

 クヲンの勝ち誇りぶりに、セレビアは悔しげに顔を歪める。 
 だが、冷静な彼女の頭脳が素直にスピードでは不利と認め、追いつかれるのは時間の問題だと直感する。

(それなら・・・・・・)

 クヲンがすぐ横にまで迫ってきたまさにその時だった。
セレビアは、彼の眼前に向かって容赦なく、

「バン!」

 得意の炎を放った。
 一方のクヲンは、寸前の所で指先に炎がくすぶっているのが見えたので、瞬時に体を回転させながらセレビアの反対側へと回り込むという、バレルロールのような動きで回避する。



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