青空、ハレの日☆奇跡の条件(加筆修正中)
 そして、その怒りに満ちた目が、動かないジョーへと向けられ、銃口が頭に狙いを定められる。
 引き金が引かれるまさにその瞬間のことだった。

「すみません、頭は止めてもらえませんか? さすがに死にます」

 それまで微塵にも動かなかったジョーが突然、頭だけをくるりと向けながら笑顔で頼んだ。

「おおぅっっ!?」

 ホラー映画より恐ろしい現実に、もはや驚愕という表現のレベルを超えてしまった灰山。
 完全に怯んだその隙を見逃さずにジョーは、起き上がると同時に鞄で銃を叩き落とす。

「っ!」

「ごめんなさい」

 全身が擦り傷と打撲にまみれ、五発も銃に撃たれたのにも関わらずジョーの顔には殆んど傷はない。いつもと同じく涼しげな笑顔がそこにあった。

 そして、爽やかに言う。

「なるほど。そういうお顔でしたか」

 「しまった!」と反射的に顔を手で覆う灰山だが、もう遅い。
舌打ちを一つして、隠すのを諦める。

「お前・・・・・・死んだフリしてたのか?」

「えぇ、あなたがどこの誰か知りたかったものですから。本当はもう少し情報を集めたかったのですがね」

「大した役者だな、お前」

「いえ、ヒーローです」

 終始変わらず爽やかな語調のジョーは、すぐさま灰山に背を向け、力強くアスファルトを蹴り逃走を開始した。

 とても重傷とは思えない見事な走りに、灰山は畏怖を感じずにはいられなかった。

「ちっ……変身できないとはいえ、厄介な相手だな、オイ!」

 毒づきながらジョーに叩き落とされた銃を拾い、バイクに跨がって追跡を開始する。
 怒りで投げつけられたフルフェイスのヘルメットがバイクのタイヤに踏み潰され、

 バキバキッ!!

 と耳障りな音をたてて砕けた。
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