青空、ハレの日☆奇跡の条件(加筆修正中)
 ジョーがワザと死んだフリをしたもう一つの理由の中には時間稼ぎも含まれていた。
 あれだけ大きく吹き飛ばされれば一旦、バイクを降りてしまったライダー───灰山は戻るまでに幾らかタイムロスをしてしまうだろう。

 その間にジョーは入り組んだ道へと逃げ込むことで、撒くことができる。
 灰山のバイクが大型であることを利用したのだ。

 ジョーは、痛みを痩せ我慢しながら裏道を抜けると、神社の林に出た。
境内をひた走ると、地面に溜まっていた鳩達が一斉に飛び立っていった。

「これは失礼しました」

 飛び去っていく鳩達に爽やかに詫びると、柵を片手で飛び越えて、眼前の五十段以上はある階段を見下ろした。

 同時に。

 ジョーは、そこで階段を登っている途中の空兎と仙太に遭遇してしまった。

「あ、ジョーさん! 丁度、よかったぁ!」

「いや……僕は今、ちょっと都合が悪いのですが・・・・・・」

 にぱっと顔を輝かせる空兎に対して、ジョーは、いつもの爽やか顔が心なしか固くなってしまった。
 一番巻き込みたくない者達に出会ってしまったことを焦っているのだ。
 さらに不運な事に灰山のバイクのエンジン音がジョーの耳に届いてきた。

「やりますか・・・・・・」

 そう呟いたジョーは、躊躇いなくそこからジャンプ。
 真ん中近くまで登っていた空兎、そして仙太の位置に着地すると二人を抱え上げて、再度ジャンプしようと足を踏みしめた瞬間、ジョーは激痛に顔を歪めた。

「ジョーさん?」

 その異変に空兎が気付いたときにはすでにジョーは、いつもの顔に戻って、

「大丈夫です」

 と、二人を心配させまいという口調で返した。
 少し間を置いてジョーは、あと半分の階段を一気に飛び降りた。
 着地の衝撃は凄まじく、空兎、仙太、鞄のマスコットとなっているキィも目を力一杯に閉じた。

「すみません。いきなりで驚かせちゃいましたね」

 今にも顔がくっつきそうな三人の真ん中にいるジョーが微笑む。

「いえ、僕は大丈夫ですけど……一体何が?」

 いきなりの展開に巻き込まれ、状況が呑み込めずに困惑する仙太。
 そこへ空兎が叫ぶ。
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