青空、ハレの日☆奇跡の条件(加筆修正中)
「せっちん! あれ!」

 空兎が指差す階段の上には、灰山が駈るバイク。

 焦燥に満ちたジョーの目がそれを捉えると、自然と二人を抱く腕に力がこもる。

「しっかり掴まっててください!」

 返事は待たずジョーは、アスファルトを強く蹴って横に跳んだ。

 直後。

 灰山のバイクは、階段前の柵を壊し、前輪を上げながら跳んできた。
 着地した後輪が先程までジョー達が立っていたアスファルトを抉り、仙太はその光景に戦慄した。

 その一方で灰山は、着地と同時に巧みなハンドル捌きとブレーキ加減でバイクを半回転し、停止させた。


 対峙するヒーローと追跡者。


 膠着は数秒と経たずにジョーから離れて一歩前に出た空兎によって破られる。

「危ないじゃないの! さっきの階段跳躍法違反ってやつよ!」

「難しいこと知ってますね、空兎ちゃん」

 素直に感心するジョーに仙太は、それまで動揺していた自分が急激に醒めていくのを感じながら突っ込んだ。

「そんな法律はありませんよ………」

「ウキュ♪」

 マスコットとして空兎の鞄にくくりつけられているキィが、状況に不釣り合いな平和な鳴き声を上げた。

 ふぅ、と灰山は小さな溜息をつきながら、

「相変わらず騒がしい娘だな」

 と言って、ホルスターからサイレンサー銃を抜き、空兎に向けて躊躇いなく発砲した。

「……!」

「え?」

「へ?」

 弾丸は空兎の茶髪を掠めて横を通り過ぎただけに終わったが、灰山の素早い一連の動きに反応しきれず固まってしまったジョー。

 まさかいきなり発砲するとは思わなかった仙太は驚愕。

 空兎は、自分の身に何が起きたのかを理解するまでに数秒を要した。

「…………恐っ!」

 身震いする空兎に、灰山は思わず口角を上げた。

「おや? 銃は恐くないんじゃないのか?」

「うっさい! 鉄砲向けられたことはあるけど、実際に撃たれたのは初めましてなのっ!」

 喧嘩腰に返す空兎にハラハラしながらも、仙太は今の会話に違和感を持った。
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