青空、ハレの日☆奇跡の条件(加筆修正中)
「せっちん!」

「っ!」

 空兎は、反射的に叫んで倒れた仙太へと振り返ったが、一方のジョーは声すらまともに出せず、振り返るのがやっとだった。

 その仙太の様子を見て、空兎の奥歯がギリッと鳴る。
すぐさま灰山へと向き直って、怒りの視線をぶつけた。
 ジョーは、そんな空兎を危ないと感じたのだろう。肩を掴んで制した。
 さすがに、いつもの爽やかな笑顔はない。

 そんな二人を前にしても、やはり灰山は悠然とした態度を崩さなかった。

「どうだ? 緋上ジョー。……変身したいか?……まぁ、できないだろうがな」

 その言葉にジョーは、僅かに眉を上げて驚いた素振りを見せる。

「……知っているのですね。僕のことを」

「それなりに……な」

「あなたは何者ですか?」

「知る権利はないと言ったはずだ……それより早く“鍵”を渡さないと、彼氏があの世へ逝くぜ? お嬢ちゃん」

 銃口を仙太にチラつかせて空兎を脅す灰山。
空兎の怒りがますますヒートアップするが、ジョーに止められてしまう。

「離してジョーさん! こいつはブチ蹴ってやんなきゃ気がすまないわ!」

「そんなことをすればこの人は仙太くんを撃ってしまいます。気持ちはわかりますが、落ち着いてください」

 空兎も頭ではわかってはいるのだが、感情がそれを許さないのだ。
空兎にしては珍しくジョーに対してきつい視線を向ける。

 だが、真っ直ぐ灰山を見据えたまま、自分を制止させるジョーの姿を見て、それから自分の肩を掴んでいるジョーの震えている手を見ているうちに、彼の中に秘めている同じ気持ちに気付いた。

(ジョーさんも悔しいんだ・・・・・・)

 全てを察した空兎は歯を食いしばって耐え、募るばかりの怒りで灰山に視線を戻した。
 灰山は、未だ悠然とした態度を崩していなかった。

「そうだぜお嬢ちゃん。そこのヒーローは逃げることしかできない無力なヒーローだ……オマケに守ることもできないな」

「………否定はしません」

 体中の怪我の痛みよりも、灰山の言葉がジョーには痛かった。
 仙太を守れず、傷つけてしまったのは事実だからだ。


 無力なヒーロー。


 そのフレーズがジョーの心に響いた。
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