青空、ハレの日☆奇跡の条件（加筆修正中）

「では、そろそろここからの移動を考えなければいけませんね。いつまでもここに留まるわけにもいかないでしょう」

　そう言ってジョーは、倉庫の出入口から外の様子を伺う。とりあえず周辺に怪しい視線や気配は感じられない。

　カモメの鳴き声と海の潮が仄かに香る以外は全く普通の港だ。

　今のところは、だが。

「家、知られてるかなぁ」
　空兎が不安そうに呟く。“ボス”という単語が彼女の中では謎の秘密結社を連想させているようだ。

　もちろんその可能性もゼロではない。

　彼らが“神杯”を狙っていてその手掛かりとなる“鍵”を空兎達が持っていることを知っていたとなると、甲斐浜家の場所も知られている可能性だってあるのだ。

　下手に帰ればそこを狙われるかもしれない。

「でも、僕らが“鍵”……キィを手に入れたのって一ヶ月くらい前だよね？もし家が知られてたらとっくに奪いに来られてたんじゃ……」

　自分でそう言って思わず身震いしそうになった仙太。

　つい昨日まで平和だった日常が前触れもなく崩れていく光景が目に浮かんで、恐怖と同時に理不尽さを感じずにはいられなかった。

「じゃあ、まだせっちんん家は大丈夫ってこと？」

「いや、自信はないけどさ……」

　仙太の言葉通りの声色に空兎も不安顔になる。

　そんな二人の様子を見てジョーは、ある提案を持ち掛けた。

「では、僕のアパートなんかどうでしょうか？そんなに広くはないですが、三人くらいなら大丈夫だと思いますよ」

「えぇ！ジョーさんん家！行きたい！行きたい！ヒーローん家！ねぇねぇ！地下に秘密基地とかないの！？」

　純真無垢な子供のように目を輝かせる空兎にジョーが返答に困っていると、すぐに仙太が救いの手を差し伸べた。

「今はそんなところで時間をとってる場合じゃないだろ……緋上さん、困ってるじゃないか」

　すると空兎はハッと何かに気付いたかのように手を叩いた。