青空、ハレの日☆奇跡の条件(加筆修正中)
 そして、仙太と並んで歩きながら、不意にジョーが言葉を漏らす。

「守ってあげてください。空兎ちゃんを」

「え?」

 思わず聞き返してしまった仙太だったが、ジョーは笑顔を空兎の背中に向けたままだった。

 その空兎が何かに蹴躓いたのか、派手に転倒した。転倒際に「あべし!」という奇っ怪な叫び声が二人の耳にまで届いた。

「何やってるんだか……」

「大丈夫でしょうかね?」

 少なくとも今の緋上さんよりマシでしょう、と仙太は思いながらジョーと共に空兎に駆け寄った。

 そこには、何やら杖を持った老人が一人、空兎の傍に付き添っていた。

 その空兎はといえば転倒の際に両膝を擦りむいたらしく、膝を立てた状態で地面に座っていた。老人はその横にしゃがみ込んで、怪我した空兎の膝を申し訳なさそうに見つめている。

「一体どうしたのですか?」

 経緯を空兎から聞こうとしたジョーだったが、答えてきたのは老人のほうだった。

 今にも世界が終わりそうな震えた声でジョーにすがり付いてくる。

「あいやぁ、ワシがこの杖をお嬢さんに引っ掛けてしもうてのぉ〜あ〜〜申し訳ないだ〜〜」

「はぁ、成る程……杖でですか」

「そうじゃ〜〜この………杖で………な!」

 老人の声のトーンが変わったと思えば突然、その杖からギラリと光る刃が覗き、老人が年齢に似つかわしくない機敏な動きで、


 ズブッ!!!


 ジョーに刃を突き立てた───


「え………?」


 ジョーの背中を貫いた刃を空兎は見た。


 その刃から滴る鮮血を空兎は見てしまった。


「……あ……ぁ」

 自らの顔にも数滴飛び散った血に空兎は一度瞬きをする。

 目の前の光景が信じられず、思考と呼吸が完全に停止してしまった。

 もう一度瞬きをしても、目の前の光景に変わりはない。

 幻のように消えたりはしない───紛れもない現実。


 銀色に輝く刃が空兎の視界から消えると同時にジョーの膝が折れ、倒れる寸前で手をついた。

 そこで、空兎の停止した時間も動き出す。悲鳴と共に。

「ジョーさぁぁぁぁぁん!!!」

 膝の痛みは消えていた。
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