青空、ハレの日☆奇跡の条件（加筆修正中）

　今はこの状況を何とかすることが先決だった。

　できるだけ心を平静にして、仙太は知恵を搾る。

(とりあえず今の状況を確認してみよう………)

　先程から後ろで空兎が半ば錯乱したようにジョーの名を呼び続けている。その様子を後ろ目で確認しようとすると……


　チャプ…………


　地面に溜まったジョーの血の池を踏んでしまった。平静になりかけていた心が再びさざ波立ち、思わず腰が砕けてしまいそうになったが必死でそれを堪える。

(落ち着け！落ち着け！)

　念仏を唱えるかのように何度も心の中で繰り返す。


　その時、仙太の足が掴まれる。ジョーだ。


　一瞬、転倒しそうになった仙太だが、それがジョーのものだとわかると、グッと耐えて、掴まり立ちの柱代わりとなった。

「すみません……仙太くん」

　仙太の心遣いを理解したのか、ジョーが弱々しくも、表情だけは笑みを作りながら礼を述べて、空兎の手を借りながら、ゆっくりと立ち上がった。

「ありがとうございます」

　呼吸も荒く二人に礼を述べると、よろよろと仙太よりも前へと出て、老人への壁となる。

　そして、二人に告げる。

「逃げて……ください」

「嫌っ！」

　真っ先に抵抗したのは空兎だった。だが、ジョーはそれを無視して、あえて仙太と話を進めた。

「よく聞いてください仙太くん……周辺にいる人達は多分皆さんこの方のお仲間だと思います」

「え？」

「………夕方の駅前なのにやけに人が少ない思えば……」

「まさか周りにいる人達皆………」

　嫌な予感を掻き立てられながら、仙太は辺りを見回す。

　散歩をしている若者、携帯電話で何やら話しているＯＬ、デート中のカップル等々……

　疎らに見える人々誰一人としてこの惨劇に我関せずといった状態だ。

　何故？

　それは、彼らがこの惨劇が起こることを事前に知っていたからではないだろうか？

　心なしか彼らが一瞬、こちらを見た気がした。

(いつの間に……だよ……)

　まるで知らず知らずの内に迷宮に迷い込んだ気分に陥った仙太。

　自分達が籠の中の鳥と悟ったとき、仙太は身震いを抑えきれなかった。