青空、ハレの日☆奇跡の条件(加筆修正中)
 自分で感情がコントロールできず涙が塞き止められない。

「ねぇ……せっちん……」

 涙で空兎の声が濡れる。それでも仙太は聞こえない“フリ”を続ける。

「何で何も言わないのよ?……嫌いになるじゃん」

 それは空兎の嘘。

 本当に嫌いになるのは………


 ジョーが刺されるきっかけを作ってしまった自分。


 ジョーが刺されても何もできなかった自分。


 守られてばっかりの自分。


 何もできない自分自身が


 一番憎くて───


 ───嫌いだった。



§


 全く人気はなくなったがその分、空兎や仙太をつけ狙う影は周辺には見当たらない。

 だいぶ迷って二人がジョーのアパートに辿り着いた時には日が沈みかけていた。

 預けられた合鍵でメモに記されている部屋番号の戸を開ける。1LDK八畳部屋。トイレとバスルームは別になっている割と広い部屋。確かに三人くらいなら余裕がある広さだ。

「……お邪魔します」

 主はいないが礼儀として仙太は最低限の挨拶をしておく。空兎は黙ったまま、すっかり疲れきった様子を見せている。

「………入ろうか」

 仙太に促されて、空兎は小さく頷き、仙太と共にジョーの部屋に足を踏み入れた。

 暗い廊下を仙太が「これかな?」と予想しながらスイッチを入れる。予想は当たって、廊下に電気が灯った。

 次に部屋の電気も灯す。ベッドが明かりによって見えてきた。

(今夜は空兎はここに寝かせた方がいいかもしれないな)

 見た目にも憔悴しきっている空兎を床に雑魚寝にはできないという、仙太なりの気遣いだ。

「あ、母さんに電話しとかなきゃ………」

 そう思い、制服のズボンから携帯電話を取り出したところで後ろで茫然とした状態でつっ立たままの空兎に目が留まる。

 ジョーの血にまみれているのも相まって、思わず目を逸らしたくなるほどの痛々しい姿だ。

「……空兎、とりあえず、シャワーでも浴びてきたらどうかな?」

「………いいよ……どうせ着替えないし……」

 今にも消えてしまいそうな弱々しく、か細い声だ。

「あぁ、そうか……でも……」
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