青空、ハレの日☆奇跡の条件（加筆修正中）

　そんなキィに、仙太は「人の気もしらないで…」と思いながら床に散乱している制服や下着を手早く畳んでいく。この辺りは家でもやっているせいか、これは然程照れはない。

　血に染まったシャツの方は自宅に帰ってから洗濯、或いは処分を考えた。

　それが終わるといよいよ母親への連絡だが、まだいまいち言い訳の方が上手く纏まっていない。

(夜勤明けだから……多分、家に帰ってるよな)

　そして時間は夕食時。

　沙恵美の性格上、夕食を作って二人の帰りを待っているかもしれない。仕事の疲れなど微塵にも見せない優しい微笑みを浮かべながら……

　それを考えると、ディスプレイに『自宅』と表示されている番号をコールするのが躊躇われた。

「なんか辛いな、こういうの……」

　小さく呟いて、コールボタンを押した。

　耳に響くコールを聞きながら必死に言い訳……嘘を考える。思い付いてから掛ければ良いのだが、いくら経っても良い言い訳が思い付きそうにないので、いっそのことこれで自分を追い込んでみたのだ。

　数回のコールが鳴って、沙恵美が電話に出た。

『はい、甲斐浜です』

「あ、母さん……僕だけど………」

『あ、仙ちゃん？丁度よかったわ、電話しようとしてたところなのよ』

　沙恵美のその言葉を聞いて、仙太はドキッとした。帰りが遅いことを言われるのかと思ったのだ。

　けど、その予想は違っていた。

『母さん、急な出張で今から出なきゃいけないの。しばらく家に帰れそうにないんだけど……』

「え、あぁ……そうなんだ……大変だね」

　沙恵美の意外な話に、仙太は戸惑いながらも応対した。

『今晩の夕食はもう作ってあるから、温めて食べてね』

「う、うん……ありがとう、母さん……」

『あ、空兎ちゃんまだ帰って来てないんだけど、一緒かな？』

「あ、あぁ、うん」

　替わってくれるよう、頼まれるかと予感した仙太だったが、これも予想が外れた。