青空、ハレの日☆奇跡の条件（加筆修正中）

　だが、肝心の相手にはそのメッセージは伝わっていない様子。仙太の必死の訴えに首を傾げている。

　仙太の表情に焦りの色が出てきたその時、事態は最悪の方向へ展開していった。空兎が仙太の奇妙な行動に気付き、思わず声を上げたのだ。

「なにやってんの？ せっちん」

　囁き声なんかではない、普通に会話するようなよく通る声が店内中に響き渡る。
当然、強盗二人は、それに気づいて髭男が駆け足で「なにやってる！」と、大声で様子を伺いにやって来た。

仙太の血の気が一気に引いていく。

「余計なことを企んでんじゃないだろうなぁ？」

　どんどんと髭男が睨みを利かしながら空兎に近づいていく。商品棚に隠れて、ヒーロー男の珍妙な姿は見えていないようだが、時間の問題だ。

　このまま空兎の傍まで近づけば、ヒーロー男の姿は自然と髭男の視界に入るだろう。そうなってしまえば最悪の結末直行という事態になりかねない。

　そう直感したせいか、仙太は反射的に立ち上がり、髭男の前に立ち塞がってしまった。

「な、なんでもないですよ」

　上ずった声でそう口にした瞬間、仙太は思わずこんな行動をしてしまった己を呪った。明らかに怪しく、そして危険な行動だ。

　髭男の目が、カッと最大限に広がった。

「怪しいんだよ！？ あぁん！？」

　拳銃が仙太の下顎に突き付けられる。その危機感から仙太の背筋が凍り付いた。
　サングラス男に比べ、この髭男は短絡的すぎる。何らかの衝動でその引き金がひかれることか分かったものではない。

「ちょっとぉ！」

　仙太の絶体絶命のピンチに、空兎が立ち上がる。
そのことで仙太の焦燥感はさらに募った。

「アンタ！ せっちんを脅かすなっての！ 泣いたらどーすんの！？」

　左手を腰に、右手の人差し指をビシッと髭男に突きつけ、まるで正義のヒーローのような勇ましい姿で怒鳴る空兎。

（安心してくれ、涙が出る前に心臓が止まる･･････）

　ダラダラと冷や汗を流しながら、仙太は内心でぼやいた。
　やはりというか、この状況下で空兎のエンジン再起動は心臓に悪いようだ。
　
　仙太の恐れていた通り、髭男はますます逆上した。