青空、ハレの日☆奇跡の条件(加筆修正中)
 従兄弟同士で一緒に暮らしていて、自分の方が空兎のことをよく知っていると思っていたのに、今、この瞬間、会って少ししか経っていないクヲンの方が空兎のことをよく“わかって”いるような気がしたからだ。

 その“差”に気付いて、愕然とした表情を見せる仙太。

 そんな仙太の肩に、クヲンが制止させるように手を掛けてきた。

「せっち……」

 急に緊迫した声が仙太の耳に届く。その声色があまりにも真剣みを帯びていたので、思わず仙太は、その場で立ち止まってしまう。

「どうした?」

 緊迫感からか、仙太は声を潜めて返す。間髪入れずに、クヲンは返してきた。

「やべぇな、狙われてる」

「え!?」

 戸惑う仙太をひとまず置いて、クヲンは、少し先に進んで離れている空兎に向けて叫ぶ。

「空兎!」

「ん?」

 男二人とは違い、緊迫感の欠片もない表情で振り返る空兎。クヲンが小さく手招きすると、タッタッタと足取り軽く空兎が駆け寄ってきた。

「な──んぅ」

 駆け寄ってくるなり「なに?」と尋ねようとした空兎の唇の前に一本指を立てて、声を遮るクヲン。それから口パクで「し・ず・か・に」と動かすと、ただならぬ空気を感じてか、空兎は小刻みに何度も頷いた。

「あ、そっか!」

 うっかり大声を上げてしまった仙太は、直後に自分の口を塞いで、睨む空兎や、困った視線を向けるクヲンに謝る仕草をする。

 仙太が気付いたのは、この公園内に自分達三人以外、人がいないという点だ。

「このところ、襲撃の類いがなかったから油断してたな……てっきりヒーローさんあたりが影ながら動いて、守ってくれてるもんだと思ってたけどよ」

 “鍵”───キィを狙う何者かがすぐ側にいる。そこから、ひしひしと伝わる怪しい気配、視線───殺気を感じながら、クヲンが言う。内心で「そんなわけないけどな……」と付け足して……

 程なくして、気配の正体が次々に顔を出す。予想通り、全身が黒服で、サングラスをかけた男達だ。

 数は、ざっと十数人。

 下手をすれば取り囲まれ──いや、すでに周辺を取り囲まれていた。

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