青空、ハレの日☆奇跡の条件(加筆修正中)
「せっ………ちん!手を伸ばして!」

「く……う!」

 風で栗色の髪が視界を覆うとも、手だけは懸命に伸ばす空兎。その空兎の手を、掴もうと、仙太の手が泳ぐ。

 二人の指の先が触れ合った瞬間───引き裂くように銃声がまた聴こえた。

「やべっ!」

 咄嗟にクヲンが回避行動。距離が少し離れる。

「まだ間に合うから!」

 空兎が叫ぶ。精一杯、手を伸ばし、限界まで身を乗り出す。仙太に向けて。

 仙太も手を伸ばす。空兎に向けて。

 二人の手が───がっちりと結ばれた。

「やったぁ……せっちん……」

「空兎………」

 お互い、安堵した表情で見つめ合う。

 地面まであと十数メートルといった高さで、二人はお互いを離さずに強く握り合った────


 ────はずだった。


 激しい痛みが空兎の手に走り、それで痺れてしまう。

「ぅあ……」

 赤く腫れる手の甲。一瞬にして感覚がなくなる。手に空兎は苦悶の表情を浮かべる。

「空兎!?」

 腫れ方が異常だ。今ので離してもおかしくないが、空兎は、痛みに耐えている。辛うじて離さずに仙太を繋ぎ止めている。

「………なさいから! 離さないから!!」

 また一発。何かが空兎の手の甲に当たる。弾丸ではないようだが、当たるごとに腫れが大きくなる。

 空兎の握る手がどんどんと弱くなり、顔は脂汗でびっしょりになっていくのが仙太にはわかった。

 見るに耐えなくなった仙太は目を閉じた。


 そして、穏やかな表情で

 手を───


 離した。
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