青空、ハレの日☆奇跡の条件(加筆修正中)
「じゃあさ、あの組織って、一体何なの? クヲンくんは何であんな組織なんかに……」

「組織に関しては、私も少ししか知らないんですが、それは仙太さんと一緒にお話しした方がいいですね。………クヲンさんがあの組織に身を置くことになったのは、私のせいなんです」

「え?」

 空兎が振り返ると、マリィは湯船にはったお湯を見つめて、それを指に絡ませている。

「私、悪魔なんです………不幸を撒き散らす、災厄ともいえる存在なんです」

「………見えないね」

「よく言われます」

 マリィが照れ笑いして空兎へと振り返る。

 真面目な口調から一変した愛らしい顔が少し可笑しくて、空兎は僅かに口元を綻ばせた。

「空兎さんは、私が悪魔と聞いても驚かれないんですね?」

「だって、天使がいるご時世だからね。それに最近は、ヒーローや魔法使いもブームだし」

「そうらしいですね」

 何気ない会話が二人の間の空気を和ませる。

 しかし、マリィは、また沈んだ表情となって語り出す。

「でも、私の不幸を与える力のせいで、クヲンさんはあの組織に巻き込まれたんです…………それにあの黒い翼」

「あ………」


 黒い翼。

 天使であるクヲンではあり得るはずはないカラスのような漆黒の翼。

 彼の去り際に見たそれも、空兎の疑問の一つだった。

「あれも多分、私の不幸を与える力のせいだと思うんです………私がうっかりクヲンさんにキスしちゃいましたから」

「き、ききききキスゥゥゥゥゥゥ!!!」

 再び空兎の絶叫が風呂場を反響する。先程よりも大きなその声は台所にも届き、仙太の手元を狂わせて二枚目の皿を犠牲にした。

 当然、今度もマリィの鼓膜をつんざいた。

「あー、あー、あれ? み、耳がキーンって……」

「あ、ご、ごめん……大丈夫?」

「なんとか。……続き、話してもいいですか?」

「う、うん、よろしくお願いします」

 いつの間にか空兎は湯船の中で正座していた。
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