青空、ハレの日☆奇跡の条件(加筆修正中)
§
町外れの埠頭。
真っ赤な夕日が海に沈んでいく風景を眺めながら、あのサングラス男は携帯電話で誰かと会話していた。
「あぁ、アイツが変身できないのは本当のようだ。あぁ、確かだ。わざわざ猿芝居までして確かめましたからな。・・・え?・・・・・・いや、大したもんじゃねぇ。ちょっとヤク中の男をそそのかして強盗ごっこをな・・・・・・。問題ねぇ。そいつはサツに捕まった。そいつの口から俺達のことがバレることはねぇよ。・・・・・・安心しろ」
そこまでいって男は掛けていたサングラスを外し、一呼吸置いて続けた。
「それと、ちょっとおもしろい娘がいましたぜ。・・・・・・なに、ついでの話だよ。じゃ、またな」
男は電話を切ると、サングラスを足で踏み潰し、バイクでその場を走り去った。
§
騒然としていたコンビニ付近は、今は静かだ。
野次馬はいなくなり、コンビニ店周囲は警察の“立入禁止”の黄色いテープで張り巡らされている。
店内の出入口には警官が一人、見張り役として立っている。
そこへ、一人の女性がやって来た。
見張り役の警官が、警戒するよりもまず思わず目を奪われた。
眼鏡を掛け、地に着きそうな長い金髪をしている美麗な大人の女性が自らに妖艶な微笑みを向けながら歩み寄ってきているのだから。
「いい子ね・・・・・・」
細長い人差し指が警官の唇へと伸び、なぞらえ始める。
そして、女性がその唇を一周終えた途端に警官はヘナヘナと、まるで全身の力が一気に抜けたかのようにその場に倒れこんだ。
「しばらくお休みちゃん」
眠りこけた警官にそう告げながら、女性はドアの前へ立つ。電気は止まっているにも関わらず、自動ドアが開いた。
荒れ状態の店内に入るなり、彼女が一直線に向かったのはトイレだ。
ドアを開けて、荷物置場に置きっぱなしになっている本を見て、口の端を釣り上げた。
「みっ〜け!」
まるで少女のように喜んだ。
【No.2 完】
町外れの埠頭。
真っ赤な夕日が海に沈んでいく風景を眺めながら、あのサングラス男は携帯電話で誰かと会話していた。
「あぁ、アイツが変身できないのは本当のようだ。あぁ、確かだ。わざわざ猿芝居までして確かめましたからな。・・・え?・・・・・・いや、大したもんじゃねぇ。ちょっとヤク中の男をそそのかして強盗ごっこをな・・・・・・。問題ねぇ。そいつはサツに捕まった。そいつの口から俺達のことがバレることはねぇよ。・・・・・・安心しろ」
そこまでいって男は掛けていたサングラスを外し、一呼吸置いて続けた。
「それと、ちょっとおもしろい娘がいましたぜ。・・・・・・なに、ついでの話だよ。じゃ、またな」
男は電話を切ると、サングラスを足で踏み潰し、バイクでその場を走り去った。
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騒然としていたコンビニ付近は、今は静かだ。
野次馬はいなくなり、コンビニ店周囲は警察の“立入禁止”の黄色いテープで張り巡らされている。
店内の出入口には警官が一人、見張り役として立っている。
そこへ、一人の女性がやって来た。
見張り役の警官が、警戒するよりもまず思わず目を奪われた。
眼鏡を掛け、地に着きそうな長い金髪をしている美麗な大人の女性が自らに妖艶な微笑みを向けながら歩み寄ってきているのだから。
「いい子ね・・・・・・」
細長い人差し指が警官の唇へと伸び、なぞらえ始める。
そして、女性がその唇を一周終えた途端に警官はヘナヘナと、まるで全身の力が一気に抜けたかのようにその場に倒れこんだ。
「しばらくお休みちゃん」
眠りこけた警官にそう告げながら、女性はドアの前へ立つ。電気は止まっているにも関わらず、自動ドアが開いた。
荒れ状態の店内に入るなり、彼女が一直線に向かったのはトイレだ。
ドアを開けて、荷物置場に置きっぱなしになっている本を見て、口の端を釣り上げた。
「みっ〜け!」
まるで少女のように喜んだ。
【No.2 完】