青空、ハレの日☆奇跡の条件(加筆修正中)
 灰山がそんな怒声を上げた瞬間、森の奥からまた一人、人影が現れてきた。

 女性で、ジョーとセレビアは、彼女の顔は見覚えがある。

 レンカ・仲里だ。しかし、髪型が肩まで下ろしたものとは違い、丸く団子のように二つ、両サイドに纏められた髪型に代わっていた。

 そんなレンカが灰山の横に立つと、セレビア達に視線を向けたまま、灰山に冷たく言い放つ。

「騒がしいわ。交渉はもっと優雅にやりなさい」

「けっ」

 レンカの言葉が耳障りと言わんばかりに、灰山は彼女の横顔から大きく目を逸らした。そして、それきり口を閉ざすようにして、火を点けずタバコを咥えてしまった灰山に成り代わり、レンカがセレビア達と話し始めた。

「失礼しました。先ほどの勝負の件ですが、残念ながらわたくしとしましても賛同しかねます。あまりにも不釣合いですので……」

「あら、そうかしら? このままあなた達が“本”や“鍵”を持っていても、“神杯”に辿り着く可能性は低いわ。ひょっとしたら、ゼロかもね……だとしたら、私達と勝負して、もしもの可能性に賭けてみたらどうかしら? 少なくとも、あの“本”を書いたのがマレスト……私の師ってことはハッキリしていること。私の故郷である“魔法使いの森”に帰れば、関連する資料が残っていても不思議ではないわ。ま、勝てたらの話だけどね」

「あなたの低俗な挑発には乗りませんよ」

 あくまで冷たい物言いのレンカにセレビアは僅かに眉をひそめた。そして心の中で「どこが優雅なんだか」と皮肉った。

 このまま空兎の提案が流れてしまうかに思われたその時、クヲンが「おもしろいじゃん」と口を開いた。

 その一言にその場にいる誰もが意外な表情となった。いや、ただ一人、空兎だけが輝いた瞳を大きく開いてニッコリ笑顔を作っていた。

「そうこなくっちゃ! 決まり!」

 試合開始前の選手宣誓のように空兎は拳を勢いよく天に突き上げた。だが、直後、血相を変えた灰山がクヲンの肩を掴み、次の瞬間、思い切り殴り飛ばす。

「ふざけんなてめぇ、勝手に決めてんじゃねぇよ、ガキが……」

 地に倒れるクヲンを見下ろして灰山が吐き捨てるように言う。だが、その直後、クヲンの口元が笑みの形を作る。

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