青空、ハレの日☆奇跡の条件(加筆修正中)
「よく考えてみろよ……あの魔法使いの言うとおりだぜ? “本”と“鍵”があったって肝心の“神杯”は手に入らない。ここは多少、リスクを冒しても勝負すべきじゃないのか? “奇跡”ってもんを手に入れるためならそれくらい付き物だろうが?」

「てんめぇ……」

 今度はクヲンの胸倉を掴む灰山に、空兎が叫ぶ。

「ねぇ、ひょっとして、自信ないの?」

「あぁん?」

 灰山の眼光が空兎を射抜く。だが、空兎は怯まない。

「あ、怖いんでしょ? だから卑怯な手でジョーさんを襲ったり、マリィを人質にして、クヲンくんを利用したりするんだ……セレビアさんとクヲンくんを戦わせたのだって、本当は自分たちでやるのが怖いからでしょ?」

「お前……!」

 灰山の目つきに鋭さが増す。彼の敵意がクヲンから空兎へと移るのが誰の目から見てもハッキリと分かった。

(もう、空兎の奴……)

 この状況に誰よりもハラハラしているのは仙太だった。動こうにも体が震えている。以前、灰山に撃たれた記憶が甦り、完全に硬直してしまっていた。

 しかし、救いの手は意外な所から来た。

 レンカが今にも空兎に手を出しそうな勢いの灰山の肩を掴み、空兎に告げる。

「当然です。わたくしたちは普通の人間ですから緋上ジョー様やセレビア=J=ダルク様のような存在を恐れるのは至極当たり前のことなのです。あなたもそうじゃありませんか? 天羽空兎様」

「いやぁ、く、空兎様って呼ばれるのって、な、なんか照れるなぁ~」

 デレデレになる空兎。仙太は内心で「いや、照れている場合じゃないだろう」とツッコミを入れておいた。

 程なくして、空兎は照れ顔から立ち直って、レンカに言い放つ。

「悪いけど、私はジョーさんやセレビアさん、クヲンくんやマリィを怖いと思ったことないよ。じゃなきゃ、一緒に冒険とかしないよっ!」

 自身もって白い歯を見せる空兎。レンカは、何を返しても無駄だと判断したのだろう、何も言わず目を伏せた。

 灰山の手を振り解き、クヲンがゆっくりと立ち上がる。そして、小さく笑いながら空兎に尋ねた。

「それで、勝負って何だ?」

 空兎は、至極真剣な眼差しと指先をクヲンに向けて言い放った。

「ハイパー鬼ごっこよ!」
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