青空、ハレの日☆奇跡の条件(加筆修正中)
§


 湖畔を走る空兎。その少し後ろに仙太が、マリィは空を飛んでついていく。そこへジョーが追いついて空兎の横へと並ぶ。

「ジョーさん! セレビアさんは?」

「セレビアさんに心配は無用ですよ」

「だよね!」

 いつもと変わらない微笑みだけだったが、空兎には充分だった。

激しく轟く銃声や、それに混ざっての雷鳴、火器とは違う爆音。それらを背に受けながら、空兎たちはフィールドからの脱出を目指す。

 そんな時、空を飛んでいるマリィが弧を描きながらこちらに飛来してくる何かに気づく。

「あ、皆さん、何か―――」

 その瞬間、マリィの言うその“何か”が空兎たちの走っている前方の地面に落ちて爆ぜた。それに煽られて湖に落ちていく空兎、仙太、ジョーを空から見送るマリィ。

「大丈夫ですかぁ?」

「ぷはぁ! 大丈夫だけどぉ、危ないもの来る前はもうちょっと早く、正確に教えてよね!」

 湖から顔を出して空兎は空のマリィに向けて思いっきり叫んだ。でも、それは怒っているのではないと、仙太やジョーも気づいていた。

「楽しそうですね、空兎ちゃん」

 その言葉は今のこの状況ではあまりにも不釣合いだと仙太は思ったが、確かにそれは今の空兎の表情を表すにはピッタリの言葉だった。

 状況が分かっていないのではない。分かっていて、それを心の底から存分に楽しんでいる。

 何が彼女をそうさせているのか、朝まではあんなに落ち込んでいた彼女が今ではこんなに楽しんでいる。

 短い時間の中で、彼女の心にどのような変化が起きたのかは皆目検討がつかないが、その笑顔は不思議と気分を明るくさせた。

 だが、そんな気分に水を差す声が聞こえてきた。

「捕まえるってのは、死体でも構わないよな?」

 灰山が湖に落ちた空兎たちを見下ろす。その手には手榴弾が握られていた。それがマリィの言った“何か”である。

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