青空、ハレの日☆奇跡の条件(加筆修正中)
§


 乱れた息を整えつつ、セレビアは最後の一人の頭上に雷を落とした。マシンガンを持ったその黒服の男はそれを撃つまでもなくスタンガンほどの電流を浴び、体を痙攣させて倒れた。

「手加減してあげただけ、感謝しなさい」

 その言葉は周囲に倒れている黒服達に向けられていた。セレビアが本気ならば彼らは間違いなく絶命していただろう。手加減した自分を甘いと思いつつも、後のために体力温存していたのだと自らに言い訳する。そして、その場を後にして空兎たちを追おうと足を動かそうとした所で、忍び寄る殺気に気づいた。

 その時はもうセレビアの視界の風景は大きくブレ、次の瞬間には頭と肩の痛みと共に地面が映っていた。

 その喉元に鋭く光るナイフが当てられる。その持ち主をセレビアは知っていた。

「部下を犠牲にして奇襲? 意外とやることがせこいのね?」

 自らの背に馬乗りになっている奇襲者―――レンカに嫌味をぶつける。彼女はその冷酷な視線でセレビアを見つめたまま、ナイフを握っていない、セレビアの肩を押さえている手の力を強めた。「余計なことは言うな」という意思表示だろう。

 女性とは思えない、関節が外れるのではないかと思う痛みにセレビアの表情が歪む。

「安心なさい。抵抗しなければあなたを殺すことはありません。あなたには我々を“魔法使いの森”に案内するという役割がありますから」

「それにしては……随分と手荒ね。いきなりドンパチなんて」

「我々とあなたではアドバンテージがありすぎます。こちらに手加減する余裕なんてありません。現にあなたはこうして生存している。………余力を残して」

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