青空、ハレの日☆奇跡の条件(加筆修正中)
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 森の奥から飛んでくる銃弾をジョーは木々を盾にしながら凌いでいた。

 一発、二発、灰山は的確にジョーを狙い撃っていた。少しでも気が抜けば確実に当たっている。ジョーでそうなのだから、常人ならばもう死体と化して不思議ではない。むしろ計十発は撃ち込まれて、まだ一発も当たっていないジョーの運動神経が卓越しているのだ。

 そこはさすがヒーローというべきものだった。

(森の中に投げ入れたのは失敗だったかもしれませんね)

 空兎や仙太を巻き込むまいとしてジョーは灰山をこの森へと投げ飛ばしたのだが、彼はすぐに立ち直って森の奥に隠れてしまった。

 周囲が木に囲まれた状態のこの場所では相手が見えないということは致命的になる。

 木に身を隠し、銃弾が飛んできた方向を除き見るが、肝心の灰山の姿は鬱蒼とする木々がカモフラージュとなって見えない。

 森の高湿度がじんわりと全身に汗を滲ませ、頭に斜め掛けに被っているヒーローのお面を濡らした。

 顔に被っていては視界が限定され不利となり、それが命取りになると悟りこうしているわけだが、元々変身できない自分を鼓舞するための大切なアイテム。

 こういう時にはどんな形であれ身に付けておきたかったのだ。

(空兎ちゃん達はもう行ったかな……?)

 とすれば自分の役割は彼を空兎たちの元へは行かさないようにすることだ。一番最悪なパターンは、空兎たちが自分を追いかけてくることである。

 特に何も言わずに灰山を追いかけてきたことをジョーは少し後悔していたが、それは杞憂に終わった。

 何も言わなくても空兎たちは自分を追わずに己の目的を果たそうとしている。もし自分を追いかけていたのならとっくにここに追いついているはずだ。

 それについてジョーは少しも空兎たちが薄情だとは感じなかった。むしろ、信頼してこの場を任せてくれていたことが嬉しかった。

(もう、負けられないな……)

 グッと拳を握り気合を込める。深く一度深呼吸した所で、また一つ、銃声が轟いた。



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