青空、ハレの日☆奇跡の条件(加筆修正中)

☆それぞれの天気

 組織が森の奥地に設置した簡易式ベースキャンプ地で、ルミネ・クロスネンボは眉間に深いしわを刻んでいた。

 ハイパー鬼ごっこが開始してから三十分が経過しても、入ってくる情報がロクでもないことに彼は苛立っていた。

 相手が鍛え抜かれた軍の一個中隊ならまだそれも納得できるだろう。

 だが、そうではない。たかが五人の敵だ。いくらその中に魔法使いやヒーロー、悪魔がといった非常識な存在がいたとして、ターゲットとなる天羽空兎は普通の女子高生だ。

 数の利はこちらにあるため、物量戦にもちこめばすぐに勝負はつくと思っていたが、第一部隊は魔法使い一人に全滅させられたという。

 その後、その魔法使いを捕縛すると言ってこの場を離れたレンカ・仲里との連絡もない。緋上ジョーを始末すると意気込んでいった灰山幸四郎も同じだ。

白矢クヲンは「好きにやらせてもらうぜ」と言ったきり、空へと消えてきった。もしかしたら裏切ったか、という思いが過ぎり、落ち着いてテント内でアームチェアにも座っていられない。

 しかも目の前では部下たちが忙しくなく通信機で“鬼役”の部隊と連絡を取り合っているが、その内容がルミネに届くことはない。恐らく耳に入れたくない内容なのか、交信できないのかのどちらかだろう。

 それがさらにルミネを苛立たせた。

 それを少しでも和らげようと、スーツの胸ポケットから箱に詰まれたタバコを一本取り出して口にくわえる。

 彫刻入りの黄金のジッポーでそれに火を点ける。テント内で喫煙はいかがなものかと注意できる者はこの場にはいなかった。

 一呼吸で肺を煙で満たした後、一気に吐く。それを幾度か繰り返すうちにテント内が紫煙で曇っていった。

 そんなテントに灰山が入室してきた。ルミネが鋭い眼光を飛ばす。

「ボス、タバコは止めておいたほうがいいですよ」

 入るなり、灰山は恐れることなくルミネを注意する。
< 380 / 500 >

この作品をシェア

pagetop