青空、ハレの日☆奇跡の条件(加筆修正中)
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「全く……手こずらせてくれたわね」

 ヨロヨロとした足取りでセレビアは森の中を歩いている。

 レンカとの交戦はとりあえずセレビアに軍配が上がった。

 指先から放つ従来の炎の弾丸は、組み付かれた状態では撃つことはかなわなかった。

 だからセレビアは全身から高熱の炎を数秒放出して、周囲の酸素を一時的に消費させたのだ。

 そのためレンカは急激な炎を見たことのショックと酸欠で、気を失った。幸いにも命には別状はない。

 当然、ダメージはセレビアにも被り、レンカ程ではないが、酸欠で頭がズキズキと痛む。足取りが重いのはそのためだ。

 それでも休んではいられなかった。

 あの子達のことを考えると、自然と体が起き上がり、足が動いた。

(勝負の行方は……空兎はもうゴールしたのかしら?)

 そう思いたかったが、冷静に分析する頭が、それがまだ無理だと答えを出す。

 いくら空兎が暴走機関車のようでも、組織に人海戦術は凄まじいもの。開始して三十分ほどで突破できるほど容易いものではないはずだ。

 やはり、変身できないヒーローくんや、ちょっぴり……というより、かなり抜けている悪魔ちゃんだけには任せていられない。

 自分が駆けつけて空兎、そして仙太を守るべきなのだ。

(フッ、なんか、ホント、変わったわね……私)

 こんな風に他人のことを考えるようになるなんて、正直思わなかった。

 最初は空兎たちを利用するために行動していたはずなのに、いや、今もそのつもりではあるのだが……何故か必死になってしまう。

 理屈ではない。説明できるものではない。

 自分がそうしたいのだ。

(少しだけ、ヒーローくんの気持ちが、わかる気がするわ)

 内心で苦笑したその時、何かが爆発したような、とてつもない轟音が鼓膜をつんざいた。
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