青空、ハレの日☆奇跡の条件(加筆修正中)
「やったぁ! これで怒られずにすむ~~!」

 空兎が嬉しさのあまり、“本”を抱き締めようとしたが、それはセレビアが手を離さなかったので叶わなかった。

 途端に、二人の顔がキッと睨み顔になる。

「ちょっとお嬢ちゃん。この本は私のものなんだけど?」

 穏やかに聞こえるが、明らかに怒気が混ざっているセレビアの口調に対し、空兎はいつもの調子で対抗した。

「ちがーう! アタシの! ほら、コンビニのトイレの匂いがちょっとするし!」

「に、匂いって?!・・・・・・確かにこれはコンビニのトイレなんかにあったけど」

「でしょ! あれ、アタシが置き忘れてただけなんだからねっ! だ・か・ら! これはアタシのなの!」

「置き忘れたあなたが悪いんじゃない! 拾ったのは私! だからこれは私のものよ! 苦労してやっと見つけたのよ!」

「カンケーないよっ! っていうか、それないと萵車の雷が落ちちゃうの!」

 その時、セレビアの目が、スッと細くなった。

「雷・・・・・・ねぇ」

 除に、セレビアは本を掴んでいる手とは反対の手で天を指した。空兎はそれを見なかったが、ゴロゴロという音は耳に入ってきた。

 そして次の瞬間、

 凄まじい雷光が鼓膜が破れそうな轟音と共に空兎の背後に落ちてきた。

 さすがの空兎も、これには肝を冷やした。晴天の空と、雷が落ちて焦げた屋上の地面を交互に見やる。

「本物を落とされるより、マシでしょ?」

 勝ち誇ったかのようにセレビアはその指を拳銃に見立ててフッと息を吹きかけた。
 空兎は目を丸くし、視線をセレビアに戻す。その瞳はセレビアが思っていた、恐れ、畏怖するものとは違っていた。驚いてはいるものの、そこに嬉々とした輝きを放っている。

「すごい……。すごいすごいすごーいっ! こんな手品、初めて見たよ!」
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