青空、ハレの日☆奇跡の条件(加筆修正中)
「お前はどうなんだよ?」

 それは、何かを期待しているようで、その上で返ってくる答えを恐れているような口調だった。

「…………」

 灰山は、一呼吸置いた。そして答える。

「少なくとも、お前ほど“奇跡”って存在に絶望しちゃいねぇよ」

 言った直後、灰山はクヲンを乱暴に突き飛ばして傍らに座り込んだ。水に濡れた黒髪をガシガシとかいてから「ふぅ~」と息を吐いて脱力する。

「撃たないのかよ?」

 突き飛ばされた、尻餅をついているクヲンが尋ねると、灰山はリボルバー式の拳銃をぶらぶらと揺さぶった。

「弾切れ」

 予備の弾は当然持っているだろうが、リロードに時間がかかるのがリボルバー拳銃の短所だ。それを待っているほどクヲンは甘くはないだろうし、灰山にすでに殺気はない。

「へっ、趣味で選ぶからだ」

「趣味だけじゃねぇよ」

 小さく二人は笑う。

 そしてまた、少しの沈黙が流れ、ふと灰山は、離れた湖畔でこちらを不安な面持ちで見つめているマリィを一瞥した。

「てめぇ……さっき言っていた「あいつを利用させないため」って、あの悪魔のことだろ?」

「…………あぁ」

 たっぷり間を置いてクヲンは肯定した。

「どういう意味だ?」

「知ってどうするんだよ?」

「てめぇの話次第だ」

 あんたがそんなことを言うとはな、とクヲンは内心で苦笑した。それが実際に顔に出ていたが、俯いていて灰山には見えていないのは幸いだったのかもしれない。
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