青空、ハレの日☆奇跡の条件(加筆修正中)
 僅かに冷たくなった空気が彼女から流れてきたが、空兎はまるで感じ取っていない。
 幼い子供のように非現実的な事を信じ、恐いもの知らずといった彼女にセレビアは思わずイタズラ心をくすぐられた。

互いに譲らずのこの埒のあかない状況をなんとかするためにも、セレビアは空兎に提案してきた。

 妖艶な笑みを浮かべながら……。

「ねぇ、お嬢ちゃん。この本はあなたの物かもしれないけど、私もこの“本”がどうしても欲しいの。なんたって世界に一つしかないからね」

「世界に一つ!? それってマジヤバ! やっぱりただの本じゃないね!」

 “世界に一つしかない”というフレーズに、空兎のテンションはますます上がる。そんな彼女がセレビアは少し面白く感じた。

「そうよ。だから私と勝負してみない?もちろん、この“本”を賭けてね。」

「ん?」

「勝負は至って簡単。鬼ごっこよ。私が鬼で、あなたは本を持って逃げる。ゴールまであなたが逃げ切ったらあなたの勝ち。“本”は諦めるわ」

 普通ならば「何故自分の物なのにわざわざ勝負しなきゃならないのか!?」と文句を返すところだが、空兎はこの提案に胸をワクワクさせていた。

「楽しそう!」

 空兎はすでにやる気100パーセント全開だ。そんな彼女の様子に、セレビアは魅惑的な嘲笑を浮かべた。

「決まりね!」

「うん、いいよ!あ、でもゴールって何処?」

 小首を傾げる空兎に、セレビアは少し考える素振りを見せた後、こう告げた。

「あなたの学校でどう?」

 その提案に空兎は迷わず返答した。サムズアップをして満開笑顔。
 もちろんOKの意味だ。


 鬼ごっこの詳細は以下の通りに決められた。

一:空兎が本を持って逃げる役。セレビアがそれを追う鬼役。

二:空兎は本を持って自分の学校の校門をくぐるまで逃げ切れば勝ち。セレビアはそれまでに空兎から本を奪い取ってしまえば勝ち。

三:スタートは今いる廃ビルの屋上。セレビアは空兎が逃走してから三分後に追跡開始。

四:セレビアは魔法、空兎は持っているものを使用していいが、相手に負傷を負わせる行為はお互い一切禁止。

五:制限時間はない。

 以上である。
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